作者の参議篁が遣唐使に関するいさかいにより、当時の嵯峨天皇の怒りをかって島流しになり、流刑先へ漕ぎ出した際に漁師の釣り船に出会いました。そしてその漁師に対して彼が「『俺は元気で出かけて行ったよ』と都の人たちに伝えてくれ」と心の中で託す、といったシチュエーションといわれています。
今でいうと差し詰め、上司の不興を買ったサラリーマンが地方の支社または子会社に左遷になり、その左遷先への単身赴任に出発するときの心境でしょうか。傷心の〝彼〟は、離陸した飛行機の窓から偶然見えたツルに対して、「東京に残してきた家族・友人によろしく伝えてくれよ、オレは元気で飛ばされるとな」と念じながらも、涙を抑えることができません。
なお、秒速数百メートルで航行中の航空機と至近距離ですれちがう物体など、いかに超人的な動体視力をもってしても識別できるわけはありません。しかしやはり、これもへ理屈です。ここでこのような〝合理性〟を問題にするくらいなら、他のストーリーで何で動物がしゃべったりするのでしょうか(笑い)。でもまあこの話は、そのような心情から生まれた幻のようなものとご理解ください。
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