せめて夢の中に「住の江の岸による波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ」のストーリー

(18番)住の江の岸による波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ
 住之江の岸に寄る(夜)波ではないが、なぜあなたは、夜でさえ夢の中でわたしのところに通う道に人目を避けてしまうのだろうか。


 平安時代の貴族社会は、男性が気に入った女性のところに通うのが通例であったので、この歌は「どうして私のところに通わないの」という女性の切ない気持ちを、男性がおもんばかって詠んだ歌だそうです。ずいぶんキザというか余裕がありますねぇ、敏行さん。
 さてここで眠っている〝彼女〟の場合も思いを寄せている男性がいるようですが、ここのところ連絡が途絶え、最近では夢の中にさえ出てきません。彼はなかなかのイケメンであり、うわさでは他に何人もの女性と二股・三股をかけているらしいのです。でも、純真な彼女はそんなよからぬうわさ話は信じたくありません。彼女はこう思っています。「そうだ彼は照れ屋だから、きっと夢の中でも人目を避けてこちらに来ないだけなんだ」。
 でも本当は彼の夢を見ているのに、これを獏(悪い夢を食べてくれるという伝説の動物)が食べているのです。獏いわく、「どうやらこのお嬢さんは、せめて夢の中だけでも好きな男がやってくるのを待ちこがれているみたいだが、どうせこんなチャラ男は口先だけ調子がよくて、最後は女を捨てるものと決まっている。となれば、こんな本人のためにならない悪夢は食べてあげよう。これでもうぐっすり眠れるね。おやすみ、お嬢さん」

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