うさぎのもちつき: 「朝ぼらけ有明の月と見るまでに 吉野の里に降れる白雪」 ストーリー

(31番)朝ぼらけ有明の月とみるまでに 吉野の里にふれる白雪
 明け方に有明の月が出ていたのだと思っていたら、これが吉野の里に降っている白い雪であったとは。


 むかしむかし、吉野の山里の静かな一軒家に、おじいさんとおばあさんがいました。二人は長いこと懸命にお百姓仕事を続けてきたのでした。そしてあしたは待ちに待ったお正月。久しぶりにやってくるお孫さんたちに手作りのもちでこしらえた雑煮をふるまうために、もちつきの準備を始めた矢先、おじいさんが腰痛で寝込んでしまいました。
 じい「ああ、いたた。もうすぐ夜が明けて正月を迎えるというのに、腰が痛くてもちつきもできないとは、なさけない」
 ばあ「ストレッチも柔軟体操もしないで、いきなり杵を振り回すからよ。もう若くはないんだからね」
 じい「わかってるよ! でも、もちはどうしたらいいんだ。かわいい孫たちに食べさせられないじゃないか。おやっ、夜がまだ明けきってないのに、外がやたらに明るいな。有明の月でも出ているのかな。曇っているのに」
 ばあ(窓を開けて)「いいえ、月ではなくて、雪明りよ。今雪が降っているんですよ」
 じい(外を見て)「いや、やっぱり月だ。だってウサギがもちをついているじゃないか」
 実は、昔おじいさんが山で助けたウサギたちが、その恩返しに、代わりにもちつきをしてあげているのでした。

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