ー パロディ百人一首 ー

夏の月夜:「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを 雲のいずこに月宿るらむ」のストーリー

(36番)夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを 雲のいずこに月宿るらむ
 短い夏の夜はまだ宵だと思っているうちに明けてしまった。いったい雲の中のどこに月が宿っているのだろうか。


 満月の日のことを例にとると、言うまでもないことですが、月は地球から見て太陽とは反対の位置にあります(「そんな小学生に教えるようなことを、なにを偉そうに」というご意見はごもっともです。お許しを)。そうすると、満月は日没とともに東から昇り、夜明けとともに西に沈みます。しかし、これは春分または秋分の日の頃のことで、夜の短い夏では、満月がまだ西の空に残っている時刻に日の出を迎えます。
 古来、太陽に対する月をつねに「陽」に対する「陰」のように対照的なものとみなしてきましたので、へ理屈的に言えば、太陽と満月はものごとの表と裏であり、同時に完全な形で上空に存在すべきではない。すなわち、太陽が昇ったからには月は地平線の下に隠れるべきであるという強引な主張もありえます。ところが夏の明け方はこの掟が破られるという事態になりますので、満月は地平線の下に〝退場〟(人でいえば〝就寝〟)できないなら、せめて雲の影に隠れてほしいという「願望」がこの歌にコミカルに詠まれています。
 月以外に夜の闇を照らすものがなかった時代と比べ、現代では月の占める重要度が大きく低下していますので、月をかけがえのない友として擬人化する表現はどこか懐かしい。

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