風神のビリヤード: 「白露に風の吹きしく秋の野は つらぬきとめぬ玉ぞ散りける」 ストーリー

(37番)白露に風の吹きしく秋の野は つらぬき留めぬ玉ぞ散りける
 草の上の白い露に風がしきりに吹いている秋の野では、ひもで留められていない玉が散ってしまったようだった。


 この歌が「風の厳しさ」について詠んでいることもあり、また作者の文屋朝康が「山の嵐はヤマアラシ」でとりあげたの歌の作者文屋康秀の息子ということもあって、ここでは、再度風神様のお出ましです。
 ある年の秋のことでした。このところ、例年になく風のない穏やかな日が続いていたため、風神様はすっかり退屈していました。そこへ、「雨上がりの野原に強風を吹かせよ」との上司の神様の命令が下りました。
 このところ手持ちぶさただった風神様は大喜びですが、かといって、これまでずっとヒマだったうっ憤を晴らすためには、何か普段とは変わった方法で風を起こしてみたいと考えました。そこで思い出したのが、この歌です。風神様は、「『秋の野で葉の上の露の玉に風がしきりに吹きつけると、その露が飛び散る様が、まるでひもを通して結んでいない真珠が散るようだ』ということか。そうか、ようし、こうなれば本当に真珠玉を飛び散らせてみるか。とりあえずビリヤードなんかがおもしろそうだぞ」といって、ビリヤード場へ出かけて行きました。

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