京都の丹後地方を旅したソネさんが、
由良川の河口を渡し舟で渡ったときのことを回想しています。
「あれはもう、夕方、日没に近い頃でした。由良川の河口に着いたものの、なんとかその日の内に川の反対岸までたどり着きたかったボクが岸辺を見ると、ふと視線の先に小さな渡し舟が、あたかもボクが来るのを待っていたかのように係留されていました。そして、その舟の船頭さんは、なんと金髪美人だったのです。瞬時に運命的なものを感じたというか、要は彼女にひとめぼれしたボクは、すぐにその舟に乗り込みました。
ところが、舟出してからしばらくして、河口付近の速い潮の流れにその船頭さんの櫂がとられて、流されてしまいました。でも彼女はあわてふためくどころか、ゆっくりと進行方向を向いて船首に立ち、両腕を真横に伸ばしました。まるで、ある映画の有名なワンシーンのように。そして彼女は微笑みを浮かべながら、歌を歌うように、優しくこうささやきました。『近かろうと、遠かろうと、あなたがどこにいても、心は生き続ける…』
そのときボクは、漂流と沈没のおそれがあることなんか忘れて、自分のこの恋心の行方について考え、とても幸せな気分でした」
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