ここに、夫婦仲がよい(実はそう見えるだけ)ことの象徴と知られるオシドリのつがいがいます。このうち、オスのヨシタカくんは、以前は無鉄砲で、しかもやたらにカッコつけたがる性格であり、特にすてきなメス鳥の前では、さもわざとらしく天敵の前に身をさらしたりし、そしてそのときにこううそぶいていたものでした。「キミのためならこんな命なんか、惜しくはないのさ」
しかし、その後幸運にもこのメス鳥との恋を成就することができ、ヨシタカくんは、その生き方をがらりと変えたように見えます。彼の性格は実に穏やかになり、日常において、夫婦水入らずの平穏な暮らしをすべてに優先するようになりました。
そんなある日、〝二人〟が泳いでいると、水面下に大きな年老いたコイが悠々と漂っているのが見えました。彼はつぶやきました。
「あのコイはもうかなり長生きしているんだろうな。以前は、粋がって命を粗末にしていたけど、こうして添い遂げることができた今となっては、あのコイのように、ボクも長く生きたいと思うようになったんだよ」。
ただ残念ながら作者の藤原義孝自身は、天然痘またはそれを苦にした自殺(?)で、わずか21歳で人生を終えたそうです。
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