クレオパトラ:「忘れじの行く末までは難たければ 今日を限りの命ともがな」のストーリー

(54番)忘れじの行く末までは難たければ 今日を限りの命ともがな
 いつまでもあなたを忘れないということばが将来にわたって信頼できないものならば、きょうを限りに命がつきてしまえばいいのに。


 古代エジプトの女王クレオパトラは、愛人ユリウス・カエサル(Julius Caesar 英語風に読むと「ジュリアス・シーザー」)との別れに際して、嘆いています。
 「カエサルさまはこのわたしに対して『いつまでも忘れないよ』とおっしゃってくれたけれど、そんな言葉が将来まで変わらないなんてありえない。だったら、この言葉を聞いてしまったきょう限りでわたしの命も尽きてしまえばいいのに」。
 しかし、カエサルはクレオパトラをおいて、ローマに帰ってしまいました。そして数か月後、彼女のもとに彼から一羽のオウムが届けられました。そのオウムは彼女を見ると、口ぐせのように「キミノコトワスレナイヨ」と繰り返しつぶやきます。彼女はこれを聞いて、涙ぐみました。
 「ああ、お優しいカエサルさまは、わたしのため、このオウムに『君のこと忘れないよ』なんて、しゃれたひとことを覚えさせてくれたんだわ。だから、こうしていつまでもあの愛の言葉を聞いていられるんだわ。だけれど結局、聞けば聞くほど悲しくなって涙ばっかり出てしまうじゃない!もういっそのこと、暗殺でもされてしまえば、彼を永遠にひとり占めできるのに」

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