作者紫式部とその幼友だちとの再会を題材としています。諸説ではこの友人が訪ねてきたという設定です。当時宮中にいた女房が、しかも夜に外出することなどめったになかったので、当然と言えますが、外で再会したというのも風情がありそうです。どちらにしても、月明かり程度の明るさでは、人の顔の区別も実際につきにくかったことでしょう。
この歌にヒントを得て、こういうおとぎ話はどうでしょうか。この絵の主役は、月夜に幼友だちと出会うことになっていたようですが、しかしその人は逢ったとたん、あっという間に消えてしまいました。実はその〝友だち〟の正体というのは、一匹のキツネであり、友人との再会を果たしたいという彼女の願いをかなえるために、ほんの一瞬その友人に化けてやったのでした。こんな感じなら、「狐につままれる」のも悪くはありません。
ところで「雲がくれ」で連想するのは、『源氏物語』の「雲隠」の帖(タイトルだけで本文が何もなく、ここで光源氏の死が暗示されている)です。そこで、この「雲がくれ」を「死」ととると、「久しぶりに会った友人がそのあと突然逝ってしまった」という意味にもなるかもしれません。えっ曲解にもほどがあるって(笑い)。
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