柴犬(実は雑種?)のロミオくんは、ある日街頭で、一匹のかわいいプードル犬を見かけました。〝彼女〟をひと目見てすっかり夢中になったロミオくんは、ウーワンッ(こんにちは)とあいさつして、おそるおそる名前をたずねると、彼女は「ジュリエット」とにっこり笑って応えました。これで「恋の予感」を感じたロミオくんがさらに言い寄ろうとしたそのとき、飼い主と思われるおばさんが彼をにらみ、ジュリエットの首輪のリードを強く引っ張って彼女を連れ去りました。
それ以来、彼は寝ても覚めてもジュリエットのことが頭から離れません。しかしジュリエットのほうは、あの飼い主の超セレブ夫人から、「ジュリエットちゃん、あんたは立派な血統書付きのプードルなんだから、まちがってもあんなロミオとかいう下賤な雑種なんかと付き合ったらだめよ」とこうきつく言い含められていますので、もう二度と逢うこともできません。そこでロミオくんもついに彼女のことをあきらめて、こう嘆きました。
「いとしいジュリエットよ、キミのことを好きで好きでたまらないが、でももうあきらめよう。だけどこうして顔を合わしてしまった今となっては、せめてこのあきらめたという気持ちだけでも直接伝えたいものだ」
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