浦島太郎:「心にもあらでうき夜にながらへば 恋しかるべき夜半の月かな」のストーリー

(68番)心にもあらでうき夜にながらへば 恋しかるべき夜半の月かな
 心ならずもこのつらい現世で生き長らえているならば、この夜半の月が恋しいことだ。


 ここに取り上げる主人公は、その名を「浦島太郎」(どこかで聞いたことがありそうな?)といいます。彼はある日、浜で子どもたちにいじめられているカメを見かけ、「助けたらきっと楽しいところに連れて行ってもらえる」と期待してこのカメを助けました。
 案の定、彼は海の底の〝竜宮城〟なるユートピアに連れて行かれました。実はカメは浦島のこの下心を見抜き、彼を試してみたかったのです。そうとも知らない浦島は竜宮城で享楽の限りを尽くし、そうして遊び飽きた頃に元の浜に帰すよう、カメに命じました。
 ところが、帰ってきたら、世の中すっかり変わってしまい、知っている人は誰もいなくなってしまいました。そうして夜になって彼は嘆きました。「もうこれ以上長生きなんかしたくないけれど、『不本意にも』長く生きてしまったなら、今見ているこの夜更けの月をきっとなつかしく思い出すんだろうな。
 そういえば竜宮城を去るとき、あの、かわいい乙姫さまからおみやげにこの玉手箱なるものをもらったけど、これを開ければ、〝長く生きたときの気分〟が味わえるような気がする。乙姫さまは『決して開けないで!』なんていっていたけど、エーイこうなったらヤケクソだ、開けてしまえ!あっ、煙が…」

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