前回に引き続き「秋の夕暮」について詠んでいます。あわただしく沈みゆく夕日、赤や黄色に色づいてはらはらと散る落ち葉、来るべき厳しい冬の 予兆、など、このことばは人生の晩年の寂しさをも象徴しています。自分ひとりで隠棲していると、この寂しさに「自分だけがさいなまれている」ような妄想に陥りがちです。しかし一歩外に出てみれば、世の中の人も自然も全体でこの寂しさを受け止めていることがわかり、肩の荷が軽くなって、少し解放された気分になるのです。
ここに「人生の晩年」とはまだ無縁の年若き就活女性がいます。彼女は夕暮どきの今、晩秋のビル街で、イチョウの落ち葉を手に取り、うつろにこれを眺めています。リクルート活動の成果はあまり芳しくないようで、どことなく寂しそう。彼女はこの瞬間、自分だけがこんなつらい目にあっているのではないかと思い悩みます。
でももう一度まわりを見渡せば、同じ境遇のたくさんの仲間がいることがわかります。だから、うまくいかないのを「自分だけのせい」にしないで先の長い人生を陽気に過ごしてほしい。
― 老い先の短い老人より ―
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