キツツキ:「わが庵は都のたつみしかぞすむ 世をうぢ山と人はいふなり」のストーリー

(8番)わが庵は都のたつみしかぞすむ 世をうぢ山と人はいふなり
 私が住んでいる庵は都の東南の方向にあるが、世間の人は鹿が住むような憂し(宇治)場所と言っているようだ。


 ここは京の都の東南の宇治というところです。くちさがない都の人たちは、ここがシカくらいしか住んでいない、すごく寂しい田舎だと噂しています。その宇治の山の森にキツツキのカップルが暮らしていました。
 ある日都からシティボーイのカラスがこの森にやってきて、キツツキにいいました。
 「キミはこんな辺ぴな森の中で、木の幹なんかつついて何がおもしろいんだい。都なら、おいしい生ゴミはいくらでも食えるし、気晴らしに、臆病で間抜けな貴族どもをからかって遊ぶこともできるんだぞ。世間では、宇治というのは、世を「憂し」(宇治)と憂いて都から逃避した〝負け犬〟どものたまり場だといっているのに、ホントにキミはいったい何を考えているんだ」。
 この侮辱に対して、キツツキは静かに、しかし毅然として反論しました。
 「ご覧のとおり、ボクはこのように、かわいい彼女とスウィートホームで平穏に生きているんだ。ここでは都会の喧騒やどす黒い出世争いなんかないし、それにキミらみたいに、ストレスをためた貴族たちから追い払われるようなこともない。それを『憂し山』だなんて、まったく、世間の噂とはくだらないものだなあ」

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