吉永小百合 思い出し:「思ひわびさても命はあるものを 憂きに堪へぬは涙なりけり」のストーリー

(82番)思ひわびさても命はあるものを 憂きに堪へぬは涙なりけり
 つれないあなたに思い悩んでもこの命はつきずにいるのに、つらさをこらえずに流れるのは涙だった。


 つれない人のことを思ってもこの命はつきないのに、つらさに耐えられずに涙ばかり流れている。作者の道因法師はなんと八十歳を過ぎてから出家したといいますが、仏の道に入ってからも悲しい失恋の思い出にわずらわされたのかもしれません。
 さてここに、もうすでに晩年を迎えた一老人がいます。彼は五十年以上昔、あの有名な清純派女優によく似ていたサユリさんという女性に恋焦がれていました。しかし結局は、その想いがかなえられずに涙を流し続けたということです。
 そしてその後、彼は五十年以上過ぎても依然として、サユリさんのことが忘れられません。すっかり頭髪ははげ、顔はしわだらけになり、一部の歯が抜けてしまった今でも、彼女のことを思い出すと涙が止まりません。当時の悲しい失恋の痛手があまりにも大きかったからです。
 もちろん、思い焦がれる対象は現在の彼女(年を重ねたサユリさんも、きっとすてきだとは思いますが)ではなく、当時の若かりし彼女の容姿です。男というものは未練がましいだけでなく、いつまでも〝若い子〟が好きなんですねえ。

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