(あるアパートの一室。一人暮らしの男がソファに座り、涙を流している。ときおり、タオルで顔を覆い号泣)
好きなあの女にあっさりフラれ、いい年してじっとしていても涙が止まりません。(観客席を向いて)こら!こんなみっともないところを写真に撮るんじゃない!
(ここで窓の外の満月を見る)
そうだ、昔の歌人は月を見ると悲しくなるといったくらいだから、ボクのこの涙もあの「もの悲しい月」のせいにしよう。きっと月がボクに「嘆け」といっているんだ。うーむボクもなかなかの風流人だなぁ。(しばらくして)だけど、いくらなんでもこんな見え透いた言い訳ではウソっぽいな。
(その後、夕食のカレーライスを作るためキッチンに移動し、エプロンを着用して一個のタマネギを手に取る)
ようしこうなったら、この涙の理由を「タマネギが目にしみたから」ということにしてみよう。
(やにわに包丁でタマネギを切り始める。目からはさらに涙が)
男というもの、失恋したくらいじゃ泣かないものだ。わかったか!(観客の失笑)
(幕)
0件のコメント