一夜の仮寝:「難波江の芦のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき」のストーリー

(88番)難波江の芦のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき
 難波江の芦の刈り根にちなんで一夜の短い仮寝のために、身を尽くして恋を続かせなければならないのでしょうか。


 ここでの「かりね」は芦の「刈根」とかけて「仮寝」、すなわち、旅先の宿での男女関係のことです。作者は、こういう一晩のいわば行きずりの恋であっても、相手に好意をいだき関係をもったからには、この身を尽くしても恋し続けなければならないのかという女性の苦悩の気持ちを詠んでいます。
 そこで、この絵では、次の三つのシチュエーションを考えています。まず、「仮寝」の直前であるケースです。この場合の女性の気持ちは、こういう状況に至ってしまったことへのいくらかの後悔と、これから示されるであろう相手の行為と態度への不安が入り混じっています。この段階では、これが本当の〝恋〟であるのかどうか、ましてやこの恋を続けるかどうかという思いはまだ希薄です。
 次は「仮寝」の直後であるケースです。この場合女性は、相手が示した愛情表現が自分への〝恋心〟であるという確信を得ますが、同時にこの瞬間から、彼女の中に「続けるかどうか」という悩みが芽生えています。
 最後は以前の「仮寝」を回想しているケースです。女性の表情には恋への期待と「これでよかったのか」という不安が表れています。
 いずれのシチュエーションがよいかは、ご判断にお任せします。

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