あじさいをもつ女性: 「花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに」 ストーリー

(9番)花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに
 花の色は空しく色あせてしまった。自分自身が老いていくことと長雨についてあれこれ思いふけっている間に。


 一般的には「花」といえば桜のことであると解説されていますが、桜の花びらは時とともに「色あせる」わけではなく、そのままの色と形を保ったまま散ってしまいます。そこで、ここは歌の中にある「ながめ」=「長雨」の季節にちなんでアジサイとしたらどうでしょうか。
 ここにひとりの妙齢の女性がいます。彼女は雨に濡れるのもかまわず、傘もささずに色の変わってしまったアジサイを手にとってながめているのでした。年とともに失われつつある自らの〝美貌〟を惜しみながら。
 「ああ、なんということだろう。いつまでも若く、そして人並み以上にかわいいと思っていたこの身にも〝老い〟が訪れていたなんて。そういえば、最近鏡を見ると、気になる顔の小じわが増えてきたし、近所の坊やからはついに『おばさん』呼ばわりされたし。
 待てよ、このアジサイのようにいったん色あせても、雨にうたれたらまた変わっていくかもしれない。雨よ私の老いを洗い流してくれ!
 でもそんなバカなことがあろうか。結局は、この長雨のように、私も古(降る)くなっていくという自明の真理を受け入れるしかないのだろうな」

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