スペードとハートのキング:「人もをし人も恨めしあじきなく 世を思ふ故にもの思ふ身は」のストーリー

(99番)人もをし人も恨めしあじきなく 世を思ふ故にもの思ふ身は
 人が愛しくまた人を恨めしくも思われる。世の中のことが面白くなく思っているわが身には。


 作者の後鳥羽上皇は権力の奪還を夢見て鎌倉幕府に挑み(承久の乱)、敗れて隠岐の島に流されましたが、この歌はその九年前に詠まれ、ここには貴族が武士に実権を奪われたことに際して、「世の中を憂いた」感情が込められています。その意味するところは、為政者にとって支配が安定している(世の中が面白い)ときは、民衆が「愛しい」か「恨めしい」かのどちらかであり、支配が不安定のときは、民衆に対してその両方の感情をもつということになります。
 たとえばここに、二人の為政者「ハート王」と「スペード王」がいたとします。彼らが統治するそれぞれの国の政権は、見かけ上ともに「安定」しているように見えます。
 ハート王は民衆を愛していて、彼らの声をよく聞いて情報を公開し、暮らしを豊かにして平和な世の中を築こうとします。民衆の側も彼を愛し、慕っています。
 スペード王は民衆を憎んでいて、独裁政治を行って情報を隠ぺいし、重税を課し、国内だけでなく他国の平和も脅かそうとします。民衆の側も彼を憎み、かつ恐れています。
 この歌を詠んだときの後鳥羽上皇の心中には、この絵のように両方の王の気持ちが同居していたのかもしれません。

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