ー パロディ百人一首 ー

ラブレター:「かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを」のストーリー

(51番)かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを
 伊吹山のよもぎ草にちなんだわけではないけれど、このようにさえ言うこともできない。あなたは知らないでしょう、この私の燃える思いを。


 「伊吹」は地名の「二一伊吹山」のことであるとともに、「いふ」(言う)を兼ねていて、そして「さしも」ということばを引き出すために、わざわざ「伊吹のさしも草」をもってくる ―何もここまで技巧を凝らさなくてもいいと思いますが、しょせん貴族のサロンとはこういうものなのでしょう。私ならこのようなキザなサロンに顔を出すのは、ご遠慮したいところです。
 さて、現在の率直な好青年は、恋心を打ち明けるときに、こんなまわりくどい言い方はしないでしょう。ましてここは、前回および前々回に続き、純真な高校生の登場です。彼は意中の女子高生の前に立ち、緊張しきって顔を紅潮させ、しかしはっきりとこういいながら、震える手でラブレターを渡すはずです。
 「あなたのことをどんなにボクが好きか、ということ言いたいのだが言えないのです。あなたは、ボクのこの燃える想いを知らないでしょう。せめてこの気持ちをしたためたラブレターを読んでほしいのです」
 これで少なくとも、彼の率直な気持ちは伝わることでしょう。それを「伊吹のさしも草」などを持ち出されたあかつきには、この場の雰囲気は台無しです。

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