ワインを飲みながら待ちぼうけ:「やすらはで寝なましものをさ夜ふけて 傾くまでの月を見しかな」のストーリー

(59番)やすらはで寝なましものをさ夜ふけて 傾くまでの月を見しかな
 夜が更けて、西に傾くまで月を見てしまった。(あなたが来ないとわかっていたら)ためらいながら寝てしまっただろうに。


 前回の「公園で待ちぼうけ」とシチュエーションは似ていますが、今回の作者は女性なので、女性が他の女性の気持ちを詠んだものとして素直に受け取りたいと思います。
 今回の主役のアキ子さんは、前回の一途で硬直化した男性とは違い、彼氏の「今晩行くかもしれない」という一言を、期待をいだきながらも、冷静に受け取ります。彼女は普段よりも若干おめかしした程度の装いで、自宅のマンションのソファに座りながら、彼氏の訪問を待つことにしました。おりから、窓の外に見事な満月が輝いていましたので、彼女は、待っているあいだに〝ワインを飲みながらお月見を〟としゃれ込みました。しかし彼氏は深夜になっても現れませんでした。
 「待てど暮らせどあなたは来ない。それで、気がついたら夜明け近くになって月が西に傾いてしまったじゃないの。こんなことならワインを飲みながらぐずぐずとアンタなんか待たずに寝てしまえばよかった」
 がっかり気味のアキ子さんがふと、彼氏のために空けておいたソファのとなりの席を見ると、そこには彼氏の代わりに飼いネコが寝ていました。これを見た彼女は、もうそれ以上待つのもバカバカしくなり、すぐに寝てしまいました。

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