ー パロディ百人一首 ー

肩たたきのあと:「花さそふ嵐の庭の雪ならで ふりゆくものは我が身なりけり」ストーリー

(96番)花さそふ嵐の庭の雪ならで ふりゆくものは我が身なりけり
 桜が誘っているような嵐が吹いて、庭に雪(のように花びら)を降らせているが、降りゆく(古くなっていく)ものはこの自分自身なのだ。


 前の「果たされぬ口約束」からの続き
 スズキ課長は、上役の口約束を信じて昇進の辞令を心待ちにしていましたが、秋が過ぎ、冬を迎えて、新しい年が明けた頃、彼はこの上役に呼ばれ、「優しく」肩をたたかれました。彼を待ち受けていたのは、〝昇進〟どころか、退職金割り増しと引き換えの早期退職だったのです。聞けば、この上役はお調子者で、他の何人かの部下にも昇格の口約束らしきものを「軽い冗談のつもりで」していたのでした。この〝肩たたき宣告〟を受け、これまで上司に対して一度もNOを言ったことのないスズキ課長が異議を唱えられるはずもなく、やっとのことで、「はぁ、そうですか」とかすかに口にすることができただけでした。
 月日はめぐり、きょうは彼の最後の出勤日。形ばかりの退職のあいさつと惜別の言葉を交わし終えて帰る道すがら、ひどい春の嵐で満開の桜の花びらがまるで吹雪のように散っていました。スズキ前課長は、散りゆく桜の枝のひとつを手につかんで、半ば呆然としながら、こう思いました。「この桜吹雪、何だか雪が降っているように思えるが、そうではなく、古くなっていく(降りゆく)ものは、この私自身なのだ。これからの老後をどうやって過ごそうか」

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